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 まあ、タイ映画でも観ますか。

【雑感】『運命のふたりー劇場版ー』がNetflixにやってきた!

『運命のふたりー劇場版ー』がNetflixにやってきた!ヤァ!ヤァ!ヤァ!

日本のファンが待ちに待った『運命のふたりー劇場版ー』の日本配信がついに開始されました!

MobileOctaより転載

 

というわけで。

ブログらしい記事としてこの映画をまとめようとしては失敗し、失敗し、幾月か。

こりゃもうまずは雑でもいいから自分の感想を書くしかないなと。

 

雑感、「まとまりにかける、様々な感想」を意味する言葉ですが、

この記事は、まとまりにかける、“雑な”感想です。

お付き合いいただけましたら幸いです。

 

この記事を書く意図は

・情報としての記事が全くまとまらないので、自分の感想をまず出してしまおうと言うこと

・ドラマシリーズを観た方に、とにかく早く劇場版を観てほしいという思いをぶつけること

この二つです。

 

ネタバレしないように行くつもりですが、多分ネタバレとネタバレ無しのはざまをユラユラしながら進むことになるかもしれません。(してたらゴメンネ…でもしてないと思う!)

 

あのふたりが帰ってきた!

まあとにかく、一言目に言いたいのは

 

「あのふたりが帰ってきた!!!!!!!」

 

です。

 

ドラマシリーズの来世なのか、来来来世なのか、その辺りは不明ですがとにかくあの2人が、あの2人の魂が、またこの世に産まれ落ち、この世界を生きているという物語です。

 

違う人物なのに、確かにあの2人の魂である。という。

これ、俳優さんはすげーなとつくづく思います。

 

今回の主人公、ゲイソンとブポップと言う名なのですが、この2人はこの時代(1844年、ラーマ3世の治世)に生きる2人なのに、観客には確実にカラケーとデートの魂なのだと感じさせてくれます。

魂を引き継いだ、違う人物の新しい人生。それを見事に演じるベラー・ラーニーとポップ・タナワット、本当に素晴らしい俳優さんです。大大大絶賛、絶絶絶賛でございますよ。

 

はあ、もうこのことだけで私は息切れしてしまっとるのですが。

第3の主人公メータス

次に言いたいのは、第3の主人公であるメータス。これ、ポスターの中では脇役の一人として小さく写ってますが、どう考えてもメインですよ。今回主役3人でしょ。

 

演じるのはアイス・パリス氏。

ナダオ・バンコク所属の俳優さんだそうで、タイ沼の方々にはおなじみの俳優さんなのかもしれません。(2022のタイフェスにも来ていたそう)

私はただの「運命のふたりマニア」なので、他の作品の出演者とかあんまりよく知らないのですが、人気の若手俳優さんなんですね。

なんとまあ美しい。

ターミネーター2のエドワード・ファーロングを見た時の衝撃に似ていますよね。(歳バレ…)

このアイスくんの存在が、この作品全体に涼やかな風を吹かせてくれます。

ほんと、『運命のふたり』の世界観においてベラーとポップのふたりを全面に押し出すというのが正しい広告戦略というのは分かりますが、このストーリー展開でなぜアイスくんの姿があんなに小さい?観客に対するサプライズか?(まあ、なかなか良いサプライズとも言える)

 

あの2人に対峙する役という大変重要なポジションであり、ドラマ版で言うところの「ケスラン」ポジションであるとも言えます。つまり私たちが生きる今の世の中と、映画の世界を繋いでくれる存在です。現代と過去、現実と物語が「時間」という軸で一本につながっているのだと示してくれ、また私たちの生きる現実と映画の世界はどこかでつながっているのだと私たち観客に耳打ちしてくれるのです。

 

この「3人の主役」のバランスが絶妙で、愛おしい。

スタッフワークの素晴らしさ

タイ洋折衷の衣装、神スタイリング

ドラマ版について語られるとき、多く言及されてきたのが衣装や丁度品の美しさについてです。特に私たち日本人にとっては目にも珍しい、繊細に作られたそれらを眺めることが驚きと感動となりました。

 

が、あえて言いたい。

映画版のそれらは、ドラマ版を超える美しさであると。

 

トレーラーなどを見るだけでも分かると思いますが、明治時代の「和洋折衷」のような、タイスタイルと西洋文化が混ざったファッションがめちゃくちゃ可愛い。

パンツスタイルの伝統衣装ジョンガベンに合わせるブーツや、つばの広い帽子。タイ版はいからさんと言う感じですね。(『はいからさんが通る』は大正時代ですけどね)

そしてそれらの色使いがまた見事。この映画ではこっくりした深い色の組み合わせが多いように思います。映画全体が落ち着いた深い色でまとめられており、お見事、としか言いようがない。特に衣装に見られる深い長春色とピーコックグリーンのコントラストが胸に沁みます。

衣装のスタイリングや色彩設計ってどなたがされているんでしょう?とても気になります。(調べます…見つかるかな…)

ベラ様のメイクも、ドラマ版とは全然違っているんです。

これは次代背景というよりも放送当時のトレンドを反映しているのかもしれません。

映画版でのベラ様のメイクは全体的にナチュラルテイストです。ドラマ版のツヤツヤピカピカ感とはまた違い、上気したようなヌーディーな肌の質感がすごく素敵。映画の世界にリアリティをもたらしている一要素とも言えるでしょう。

ほんと、ベラ様はいつも最高ですね。

 

(トレーラーに言及したので、リンクを貼りたいところですが、迷うなあ。

ちょい見せすぎじゃない?と思っちゃうのですよ。

後で追記で貼り付けるかもしれません。)

音楽の素晴らしさ

皆さん映画を観るときにどれくらい音楽のことって意識しますか?

今回の、『運命のふたりー劇場版―』はサウンドトラックも素晴らしい。全編通して、「映画音楽」としてのレベルが高いのです。(どこから目線だ!)

作中で使われる音楽の多くが重厚なオーケストラサウンドでありながら、タイの伝統楽器が使われた「伝統音楽」的要素も含んでいます。このサウンドトラックが1800年バンコクの空気感をより深めていると言えるのではないでしょうか。

個人的に、ドラマ版の時はあくまで「BGM」として聴いていた作中の音楽ですが、この劇場版ではしっかり「映画音楽」として堪能することができました。

もし良いスピーカーや高音質のヘッドフォンなどをお持ちなら、それらを使って観ることをオススメします。

どの作品でも同じことが言えるかもしれませんが、できるだけ映画館の、あの分厚い音響に近い形で音楽を聴けるとすごく、すごく、良いです。

 

インク・ワルントーンが歌う主題歌「ถ้าเธอรักใครคนหนึ่」(もしあなたが誰かを愛したなら:ぱちこ訳)も最高で、映画を観た後にこの歌を耳にすると、イッツオートマティックで涙が出てきます。

リンクを貼り付けますので、ぜひ「映画を見終わった後に」観てみてください!!!

※MVに多少のネタバレありです

youtu.be

 

「歴史映画」ではありません

ネタバレはしませんが、ストーリーについて1つだけ。

この映画は「史実に沿って作られたストーリー」ではありません

 

ドラマシリーズでは「史実に基づいた歴史ドラマ」であることが大きな売りであり、柱となっていましたが、映画版では「歴史に基づいたものではない」とはっきり示されています。

ただ、セリフ上1688年の出来事であることが明言されていることや、歴史上実在した人物も登場することから、あれやこれや推測するのもこの映画の大きなお楽しみポイントになっています。

(その辺りも今後、詳しく記事にしていけたらなと思っています!)

この点、「物語」として気軽に観られるとも言えるし、または「え!これどこまでが史実!?」と探りながら観るのも楽しいかもしれません。

最後に

2021年2月1日に撮影が開始されたというこの作品。日本では2度目の緊急事態宣言のさなかにあった時期です。

メイキング映像などを見ると分かるのですが、現場のスタッフさん達は皆さんマスク姿です。

あの世界情勢の中でこの作品を制作されたことに、いちファンとして心から感謝を述べたいです。

そして各国に配信が開始されたよりはまあちょっと遅くなりましたけれど、こうして日本でも配信される運びとなったということで、ほんと、めでたい。

ありがとうNetflixJAPAN様。

まとめ

この映画について話すとき、自分がドラマシリーズ版を愛しすぎていて、シリーズ未見の方にどのように紹介したらいいのか本当に分からない…。

シリーズ未見の方からしたら、この映画ってどのように見えるんだろう?どの部分をフォーカスして紹介すれば魅力が伝わる?伝えたいのですが…!!!

その辺、手探りしつつ、今後もこの映画についての記事をアップしていきたいと思います!

まずは私のあふれる愛を指に宿して記事にしてみました。

最後まで読んできただき、ありがとうございました!

「クリサナカリの呪い」のナゾ。

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これまで「ラブコメ」「歴史大河」という2つの柱を持つドラマとして『運命のふたり』を紹介してきましたが、それらに加えて外せないのが「ファンタジー」という要素です。

思惑が絡み合う歴史の流れを「タイムスリップした現代の女の子」が泳いでいくというストーリーは当然ファンタジーなわけで、そのタイムスリップの原因となるのが「クリサナカリの呪い」です。

 

「クリサナカリの呪い」って?

ドラマを観られた方はご存知だと思いますが、「クリサナカリの呪い」とは

「殺された人間の魂が、自分を殺した人間に仕返しする」という呪いです。

もう少し詳しく言うと、

殺された人が生前身につけていた布を媒介にしてその霊を呼び出し、加害者を探し出させ、呪い殺させる

というものです。

第1話でチャンワが乗った舟を侍女ピンに命じて転覆させたカラケー。結果、チャンワ本人ではく、泳げなかったチャンワの侍女ダエンの命を奪ってしまいます。屋敷の人々は皆カラケーが犯人なのではと疑い、クリサナカリの呪文を使って真実を確かめようとします。

 

タイでのクリサナカリ

のほほんと日常を過ごしている日本人の私にとってはファンタジー極まりない話ですが、この「クリサナカリの呪い(タイ語でモン・クリサナーカーリーมนต์กฤษณะกาลี )」という言葉を検索してみると、「クリサナカリの呪いは実在するか否か?」という記事がたくさん出てきます。タイのyhoo知恵袋的な質問サイトPantipでもこのことが質問されていたりします。

これ、どういうことかと言うと、タイでは日本以上に呪術的なものが日常の中に存在しているということ。

呪術を使って病気を治す職業の方がいたり、お坊さんが起こした奇跡なども一般に信じられているものがたくさんあります。呪いや聖なる力が日本よりずっと身近にあるわけです。それであの「クリサナカリの呪い」のシーンを見て「これ本当にあるんだろうか…」と思う人も多かったということ。

この疑問への回答としては、原作小説の著者であるロムペーン氏が「創作である」と明言しています。(『運命のふたり』の原作は2009年に出版された小説なのですね!タイトルはドラマの原題と同じ『ブッペーサンニワートบุพเพสันนิวาส』です。)

当時は「クリサナカリの呪いをかけてあげますよ」と言って悩んでいる人から高額なお金を取るという詐欺も起こったようで、「クリサナカリの呪いは小説の著者の創作です!詐欺に引っかからないように!」なんていう注意喚起もされていました。

 

「クリサナカリ」ってなんなのよ

さて、のほほん日本人の私はハナからファンタジーだと思っていた「クリサナカリの呪い」ですが、気になったのは「クリサナカリって一体なんなのよ」ということ。

ちょっとタイ語っぽくない気もするし、どこから出てきたものなのよ、と。

調べてみると、単純に言葉の意味としては「クリシュナ+カーリー」でした。ヒンドゥー教の神様、クリシュナ神とカーリー神ですね。

仏教のイメージが強いタイですが、日本にいろんな宗教があるようにタイにも仏教以外の宗教が根付いています。特にヒンドゥー教の前身であるバラモン教はタイにおいて歴史が古く、アユタヤ時代には王の権威づけのために利用されたという面もあります。(仏教と違いバラモン教では階級が重んじられるため)

ナライ王の名がヴィシュヌ神を意味したように、王の名前にもバラモンの神々の名が使われました。

またタイに現存している呪術の多くはバラモン教に由来するものだとも言われています。

 

じゃあなんでクリシュナとカーリーなんだ

ドラマ『運命のふたり』において最重要とも言えるこの呪文に、なぜクリシュナとカーリーの名が付けられているのかという疑問ですが、結論から言うと

「こちらで推測するしかない」

ということ。

明確な回答らしきものは見つけることはできませんでした!

 

 

 

…と書いてしまうといわゆる「いかがでしたか記事」みたいになっちゃいますが、この呪いを理解する手がかりになる記事を見つけたので、せめてそれを紹介したいと思います。

www.matichonweekly.com

この記事は美術、考古学分野においてタイ最高峰とされるシラパコーン大学のAssistant Professor(日本でいう助教ですかね)、コムクリット・ウイテッケンKomkrit Uitekkeng先生による記事です。専門分野はインド哲学ヒンドゥー教現代社会における宗教など。メディア露出も多く、自身のYouTubeチャンネル(お料理チャンネル…?)も持っているユニークな先生です。

 

タイのヒンドゥー教専門家による見解は?

参照記事は結構長いので、ちょっと要約してみました。

コムクリット先生によると、

 

✅インドには敵を傷つけるための呪いが存在する

ヒンドゥーの4つのヴェーダ(経典)の最後のヴェーダ「アタルヴァ・ヴェーダ」は呪術について書かれたものである

✅アカデミックの世界では「アタルヴァ・ヴェーダ」は土着の民間信仰からの影響が強いとされている

バラモンの僧侶が「アタルヴァ・ヴェーダ」にある「呪い」を公の儀式で使う機会は少なく、他のヴェーダほど知られていない。一般的に知られているのは民間信仰の呪術「タントラ」に分類されるものであろう

✅タントラの神々はカーリー、ドゥルガーなど女神であることが多い

✅タントラはヒンドゥーの女神崇拝の宗派と強く関連している

✅自分が探した限りでは、ヒンドゥー教におけるマントラで「クリサナカリ(クリシュナ・カーリー)」というものは見つからない

 

✅クリシュナというのは神の名前以外に「黒い」という形容詞でもある。カーリーという言葉も「黒」を表す

✅おそらく小説の作者であるロムペーン氏はその呪文を不思議なものに見せるために「黒魔術」を想起させる名前をつけたのだろう

✅カーリーが破壊と死の女神であるということだけではなく、「カーリーバーン・カーリームアン」というタイの言葉をイメージさせるためにその名を使ったのではないか

    ※カーリーバーン・カーリームアンとは生まれながらに周りに不幸をもたらす凶運の持ち主のことを言います

 

✅「カーリー女神のマントラ」と「クリシュナ神マントラ」は実在するが、それらは決して人を殺すような呪いの呪文ではない。2つは別々のものであり”クリシュナカーリー”のマントラではない。そしてこの2つのマントラはごく少数の弟子にのみ伝えられるものである

 

✅実はカーリーはヒンドゥー教以前の土着の神で、自然界の凶暴さを表している

✅クリシュナはカーリーの生まれ変わりだとする宗派もインドの一部に存在する

✅その宗派では「カーリー・シヴァ」夫妻と「ラーダー・クリシュナ」ペアの愛はお互いに影響する互換性を持つものである

✅クリサナカリの呪文について話していたのに、突然インドのロマンティックな伝説の話になってしまったなオーチャーオ(ぱちこ注:マジでこう言って記事を締めてます(笑))

 

とまあ箇条書きにするには項目が多いというか長いですが、記事自体がホントにこういう感じなのですね。

おそらく大衆向けの記事なのであまり深い話は書かれていないのだと思いますが(タントラについてもいろんな意味を持つのでここでは割愛します、と書かれています)要は「専門家から見ても言えることは上記のようなことである」ということです。

 

ドラマ後半(13話)で出てくる「クリサナカリ」

いかがですか?ぼんやりと「クリサナカリの呪い」の姿が見えてきましたでしょうか?

あの、ここまで調べてみて私、1つ気になることがあるんです。

「クリサナカリの呪い」って後半にもう一回出てくるんですよね。

呪文の書に触れて気を失ったカラケーを救うべくデート様がもう一度jum..

いや、

その内容に触れる=ドラマの核心に触れるので詳しいことは書けませんが、最大の謎が解けるあのシーンに繋がるアレです。

みんなその時のこと忘れてません?

あ、忘れてないですか?

そう、後半のシーンでは「殺戮の神カーリーの力を借りて…」的な術じゃないんですよね。人を呪い殺す云々の話じゃなくなっています。そこのところ、どうなんです?てことなんですよ。

 

勝手に考察します!

ここについてはメディアによる記事が見つけられなかったので、先程のコムクリット先生の記事を支点にしてもう少し調べてみました。

そしてそこから私が勝手に考察します!

 

カーリー信仰におけるカーリー神

カーリーは殺戮と破壊の神というイメージが強いですが、カーリー神を信仰する宗派の人々にとっては生命を与える存在であり、死の恐怖を与える存在でもある「母神」です。カーリーという名には「黒」だけでなく「時間」という意味もあり、時間を司る神だとも言われています。母なる神が誕生から死までの時間を司っているということですね。

デート様のおでこの印

もう一つ注目すべきなのは、この呪文が再び登場する13話ではデート様の額にU字のマークが描かれるということ。これ、クリシュナの特徴の一つなのですよね。クリシュナの絵には、おでこに必ずUマークが描かれています。ヴィシュヌ神の化身であることを示す印なのだそう。

1話で初めて「クリサナカリの呪い」が実行されたとき、デート様の額にこの印は描かれませんでした。つまり、13話ではクリシュナの力がメインとなっている?

クリシュナは「愛の象徴」とされています。うーむ、デート様がクリシュナ神の力をお借りする的なこと?

チーパカオ師のセリフ

と、ここで一つ思い出したことが。第14話でのチーパカオ師のセリフです。アユタヤから去るというチーパカオ師とカラケーの最後の会話で、師はデートについてこのように言います。「生まれ持った魅力で誰からも好かれる。敵も彼を攻撃することはできない」。これって、クリシュナの特性とピッタリ重なるんですよね。これは意図して描かれていると考えて良いのではないでしょうか…。デートの人物像はクリシュナのイメージと重ねて描かれている、と。もちろん私の勝手な推測ですが。

勝手な考察のまとめ

以上をまとめますと、「クリサナカリ=クリシュナ・カーリー」の呪いにおいて、1話ではカーリーの怒りと殺戮の力を借り、13話ではクリシュナの愛の力を借りたと考えるのが自然なのではないでしょうか。また、人間の誕生から死までを司るカーリーの力を借りて現代とアユタヤ時代に生きる人間の時間を行き来することができた…とも考えられます。

 

まとめ

専門家の先生を持ってしても最終的には「作者ご本人に聞くしかないね」とのこと。おそらく作者による種明かしのようなものも無いと思われます。

ですが、ここまで調べてきたことを自分なり推測してみると、「カーリー神とクリシュナ神の力を借りる呪文」であり、第1話ではカーリーの、血を好む、殺戮の象徴としての力を借り、後半では生と死、時間をつかさどる神としての力を借りる。また、そこへ辿り着くためにはクリシュナの愛の力が必要である、ということなのではないでしょうか。

そして、もしかするとコムクリット先生の記事にあった「クリシュナはカーリーの生まれ変わりである」とする宗派の考え方も関わっているかもしれません。「怒りが愛に生まれ変わった」というのはこのドラマのテーマの一つではないだろうか?と思ってしまうのです。

まあ全ては想像でしかないんですけどね!

 

ヒンドゥーの神様に詳しい方からの「その神様の解釈は違う!」等のご指摘も大歓迎です!

 

おまけ:タイの定番黒魔術!

タイで伝統的な黒魔術として有名なのが「パオプリック・パオクルアの黒魔術」

パオプリック = 唐辛子を燃やす

パオクルア = 塩を燃やす

という意味です。

色々と細かいやり方があるようですが、それは置いておいて、とにかくこの2種類を燃やして恨みを晴らすという黒魔術があり、実際に行われることもあるようです。(ただ、かなり深い恨みや憎しみがある場合のようですね。簡単に行われるものでは無いようです。)

ドラマなどではわりと定番のやり方のようで、日本で言うところの「藁人形を打つ」みたいな感じのようです。(それよりもっと現実的かも)

ドラマの「クリサナカリ」でも塩と唐辛子らしきものを燃やしていますよね。1度目は白い塩らしき物質をチョイとムアン(ホラ様のお付き)がガンガン火にくべていますし、2度目はデート様が唐辛子らしきものに火を点け燃やしています。どちらもはっきり何を燃やしているかに言及していませんし、映像的にもちょっとぼやかしている印象すらありますが、なんにせよ、あのシーンを見たタイの方々はそれが黒魔術であるというリアルなイメージを持ったと思われます。

【後編】【ネタバレあり】歴史ドラマ?『運命のふたり』人物紹介:がっつりバージョン

こんにちは。

今回は人物紹介【後編】です。

最後の一人は「シープラート」。デートのお兄さんですね。

第1話から14話までひとっっっことも彼の話は出てこなかったのに、最終回でかなり重要な感じで登場します。超有名な人物なので、タイの方にとっては不思議ではなかったかもしれません。でも何も知らない日本人の私にとっては「これは一体…?」という感じでもあったので、しっかり目に調べてみました。ネタバレを含みますので、知りたくない方はスルー推奨です!

今回も【前編】【中編】と同様の人物相関図を貼っておきますので、参考にしてくださいませ。左端中段あたりにいるのがシープラートです。

 

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夢か現実か?謎の男シープラート

とても重要そうな役回りなのに最終回だけに登場する人物がいます。それは宮廷詩人のシープラート。なぜ彼が最終回だけに登場し、しかも夢なのか現実なのかという曖昧な表現しかされていないのか。ドラマを見て、なんだか腑に落ちないと思った方もいらっしゃるかもしれません。

実はこのシープラート、宮廷詩人として歴史に名を残してきましたが、20世紀後半からはほとんどの学者がその実在を否定しているとのこと。現在は、ほぼ架空の人物であろうと言われています。

そのため『運命のふたり』の脚本家はドラマの登場人物として組み込むことに積極的ではなかったようです。結果、最終回のみに、夢か現実か分からない存在として登場させたということです。

 

アユタヤの歴史においてどんな人物とされていたのか?

それでは、以前は「”タイ文学の黄金時代”を象徴する天才的な宮廷詩人」と言われてきたシープラートがアユタヤの歴史の中でどのように描かれてきたのか見ていきましょう。

父、幼い「チャオシー」の才能に気づく

彼にまつわる説話は次のようなもの。彼が幼い頃(7歳、9歳、12歳等いろんな説あり)、父親であるホーラーティボディ卿はナライ王からどうしても思い付かない詩の一節を埋め、完成させるよう命じられます。しかしその場でその命を完了できなかったホーラーティボディは詩を自宅に持ち帰ります。(残業を家に持ち帰るとかアユタヤ時代にもあったんですね〜)

水浴びから戻ると、仏間に置いておいたはずの大切な書類(というか黒板のようなもの)の位置が動いています。息子がイタズラしたか?と見てみると、なんと空いていた詩の一節が完璧な形で埋められているではないですか。それは幼いチャオシーによって書かれたものでした。ホーラーティボディはその詩をそのまま王に献上します。王は大変気に入り、チャオシーを宮廷詩人として迎え入れようとします。

王と父との約束

ホーラーティボディ卿は未来を読むことができたので、息子の命が長くないことを知っていました。宮廷に仕える者たちが大きくない失敗により首を切られるのを見てきたホーラーティボディは、「今は勉学に励ませたい」と息子の入廷を断りました。そしてチャオシーが15歳になるまで様々な学問を学ばせました。

彼が15歳になったとき、ホーラーティボディは「どうか息子が何か過失をしても命を奪わないでください」という要望とともにチャオシーを宮廷に送り出します。王は父の願いを聞き入れ、チャオシーを宮廷に迎えました。宮廷詩人となったシープラートは才能を発揮し、王がどこへ行くにもお供に連れて行くほどの寵愛を受けるようになります。チャオシーがあまりにもユーモアと知恵を利かせた詩を作るため、王から賜った名前が「シープラート」。「偉大なる学者」という意味の名前です。

王宮でのシープラート①

ナライ王から寵愛を受けていたシープラートですが、ある年のロイクラトン祭りの夜、失態を犯してしまいます。酒に酔った彼はナライ王の第一側室ターオ・シーチュララック(ペートラチャの妹君!)に近づき、隣に並ぼうとしました。一役人が王の側室の隣に並ぶのは身分を弁えない無礼な行動です。(カラケーがチャンパ様の隣に並んでしまい叱られるシーンがありましたよね。)

ターオ・シーチュララックは自分を天上の月に、シープラートを地上のウサギに例えた歌を詠み、彼の行動を咎めました(歌で咎めるなんて雅でございます。)それに対し、事もあろうかシープラートは「月もウサギも所詮は同じ地面の上にあるものだ」と歌を詠み返しました。怒りの火に油を注がれた側室は、王にこのことを報告し、罰を与えるよう願い入れをしました。そしてシープラートは王宮の牢屋へ入れられることになったのです。

その後も側室からの嫌がらせは止まず、とうとう死刑を受けるところまで行ってしまいますが、そこでナライ王とホーラーティボディ卿との約束が効力を発揮しました。王はシープラートを死刑にはせず、タイ南部のナコンシータマラートへの追放だけで収めることにしたのです。タイ南部の暑さはアユタヤ以上に厳しく、当時は衛生環境も良くありませんでした。日本でいうところの島流しのようなものですね。

参考サイト:

www.thairath.co.th

www.youtube.com

王宮でのシープラート②

宮廷詩人となったシープラートの物語については、また別の説があります。

それは、詩作の才能を発揮し王から愛された彼はイケイケドンドンで宮廷内の女性たちに詩を送り、ちょっかいを出しまくったという説。それで罰を受けるため王宮の牢屋へ入られることになってしまったというんですね。牢屋から解放されても反省の色は無く、今度は王の第一側室であるターオ・シーチュララック(しつこいですがペートラチャの妹)に詩を書き送ります。いくら王のお気に入りとはいえ、一介の役人が王の側室に愛を囁くなど無礼極まりない行為です。ターオ・シーチュララックは腹を立て、このことを王に伝えます。

一線を越えるシープラートの行動にさすがの王も怒りました。本来なら死刑に処されるべき罪ですが、ホーラーティボディとの約束を守り、タイ南部のナコンシータマラートへ追放するに留めたということです。

説①の雅やかな雰囲気に比べてずいぶん俗っぽい説ですよね。『運命のふたり』に登場したキャラクターとはかけ離れているような…。

参考サイト:

www.khaosod.co.th

th.wikipedia.org

※1 wikipediaタイ語の記事と英語の記事で書かれていることが全く違うので、見比べてみるのも楽しいかも知れません。タイ語の方では、シープラートはナライ王時代ではなく、スリーイェンタラーティボディ王(ソラサック伯爵です!)の時代の人だと書かれており、これもまた有力な説のようです。

※2 リンクを貼った参考サイトは全部タイ語のサイトなのですが、「こういうニュースサイトや動画から情報を持ってきてるよ!」という報告も兼ねて貼らせていただきました。

Google翻訳だと変な感じにはなりますが、なんとなく読めるくらいにはなるかと思います!

 

流刑地ナコンシータマラートで

では、ナコンシータマラートに追放されてからのシープラートはどんな運命を辿ったのでしょうか。ドラマでは「ナコンシータマラートから忍んで父親に会いに来た」という設定になっていましたね。

幸い、ナコンシータマラート知事は詩が好きで、シープラートは知事の邸宅へ度々招待されるようになりました。そのことで、周りの人たちからやっかみを買ってしまいます。人々は「知事の奥さんとシープラートは関係を持っている」と噂を流し、彼を陥れようとしました。

噂を信じた知事は、すぐに彼を処刑することにしました。シープラートが王から寵愛を受けていたことも、王と彼の父との約束のことも知らなかったのです。処刑台に縛られたシープラートは足の指先で地面に詩を書きました。

「この大地が証人である 私が間違っているのなら喜んで殺されよう 

もし私が間違っていなければ 私を殺すこの剣は貴方の元へ戻り あなたを殺すだろう」

(※意訳です)

これは彼のかけた呪いだったのでしょうか。ちょうどその頃、ナライ王は「詩を書くためにはやはりシープラートの力が必要だ」と、彼を宮廷に呼び戻そうとしていました。

シープラートの死を知った王は知事の身勝手な行動に怒り、シープラートが処刑された剣で知事を処刑したということです。

 

教科書にも載っていた偉人

とまあ伝説的な存在のシープラートですが、タイ人の友人(アラフォー)に聞いた話だと、教科書に彼の物語が載っていたとのこと。今の教科書ではどうなのかは分かりませんが、どちらにせよこのドラマが放送される以前はデートよりも断然有名人だったようです。(デートが歴史資料に詳しく残っているような存在だったらこんな自由なドラマにはなっていないでしょうけれど。)

現在の研究では存在がほぼ否定されているということですが、

・彼の作品だと言われていた詩の筆跡が他の詩人のものだと解明された

・使われている文字がアユタヤ時代よりもっと新しい文字だった

・彼について書かれた一番古い書物はラタナコーシン朝(現王朝)に入ってから書かれたもの

など、色々な理由があるようです。

この現代の見解については「王宮でのシープラート①」に貼ったyoutubeの中で詳しく解説されています。このユーチューバーさんも「実在しないなら、私たちが小さい頃から学んできたことって何だったの!」って言ってます笑

 

Netflix版でカットされていたシーンについて

ここで少し、ドラマの話に戻ります。

いろんな説があり、実在していない可能性が高いということで、夢のような現実のようなシーンが作られたシープラート。中でも私が好きなシーンを紹介したいと思います。

それはチョイとシープラートの別れのシーンです。

このシーン、Netflix版(タイでの地上波放送版)ではとても短いシーンになっていたのではないかと思います。YouTube版ではもっと長く2人が話をするシーンになっています。

夜、ひっそりと流刑地ナコンシータマラートに戻るシープラートを見送りにきたチョイは、涙を堪えきれず「一緒に連れて行ってください」と願い出ます。

南部での生活は厳しいと言うシープラートに対し、構わない、シープラート様のお世話をしたいんだと引き下がらないチョイ。「貴方が罪に問われるようなことはしていないと分かっています。」とシープラートに伝えます。シープラートは自分をまっすぐに慕うチョイの気持ちに揺らぎながらも、「父上亡き今、屋敷には女性ばかりが残されている。お前がみんなを守るんだ。そしてしっかり母と弟デートに仕えろ。」とチョイを諭します。

チョイは主人からの最後の命(めい)を全うする道を選ぶのでした…。

涙を堪え、幼い頃から仕えた主人を見送るチョイの姿が胸を打つ、本当に素晴らしいシーンだと思います。YouTubeのURLを貼っておきますね。ご興味あれば観てみてください。(件のシーンは3:10あたりから)

www.youtube.com

またこのやり取りの中で、シープラートは「カラケーに渡してくれ」とチョイに一編の詩を託します。その詩は、ナライ王の詩の一節を幼い彼が埋めたという、あの有名な詩でした。

チョイから受け取った詩を読み、シープラートが帰ってきたことを確信したカラケーは彼の帰還をとても喜びます。おそらく彼の運命が変わったのかもしれないと思ったのでしょう。

しかし再びナコンシータマラートに戻ってしまったと聞いたカラケーは「戻ってはいけない」と慌てます。彼がナコンシータマラートに戻ることは、すなわち処刑されることを意味するからです…。(カラケーとチョイのシーンは同じ動画の15:00あたりからです)

チーパカオ師もいつも言ってましたもんね。「起こることは起こるものだ」と。運命って非情です。

 

 

シープラートを演じたのは?

シープラートを演じたのは、カンタナイ・チューンヒラン Kandanai Chuenhirun(愛称ドリーム)。ドラマ内では涙と苦悩の表情しか見ることができませんでしたが、インスタを見てみると優しそうな笑顔が素敵です。2021年現在34歳、ナコンサワン出身で、3ch所属の俳優さんです。

Instagram

https://www.instagram.com/dream_kandanai/?hl=ja

 
 
 
 
 
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おわりに

3回に分けて詳しい人物紹介をしてきましたが、史実と言われていることとドラマ内だけでの出来事の区別が難しい部分もあり(そこがハッキリ分かれてたらドラマとして成立しないわけですが)、読みづらいところもたくさんあったかと思います。

分かる範囲で「史実」と「ドラマ」の区別をしつつ書いたつもりですが、ご指摘などございましたらどしどしコメントいただけたら幸いです。

それぞれの人物の史実を調べつつ、ドラマを見直していると、つくづくこのドラマはセリフも素晴らしいし音楽も素晴らしいし、最高のドラマだなと思いました。

いつかまたどこかの媒体で配信されることを願って、その時のために「折り畳み機能(ネタバレ部分を隠すヤツ)」の勉強をしたいと思います!笑

では、長々とお付き合いいただきましてありがとうございました!

 

 

 

 

【中編】【ネタバレあり】歴史ドラマ?『運命のふたり』人物紹介:がっつりバージョン

こんにちは。

前回にひきつづき、詳しい人物紹介をしていきます。

今回は4人の紹介になりますが、個人的な推しキャラクターはこの【中編】に固まっているかも…。(なので1人あたりの分量がちと多いです。)

がっつりネタバレありになっておりますので、内容を知りたくないという方はスルーをオススメします。

今回も、前編と同じ相関図を貼っておきますのでご参考にどうぞ!

 

f:id:pachiko_shikako:20211025011909p:plain



 

ペートラチャ(トンカム)

王室戦象軍の責任者。ナライ王がそれ以上の地位を授けようとしても、決して受け取らなかったと言います。

ナライ王の乳母を母にもち、幼い頃から王と一緒に育ってきました。

高官の中でも「王にいつでも、直接、謁見できる立場」という区分があるようで(どういう線引きかちょっと分からないのですが)、ドラマの中でもそれを許された人物かそうでないかという話が出てきます。物語の中で、王と1対1で話すシーンがある高官はホーラーティボディ、コーサーレク、ペートラチャ、コンスタンティン・フォールコンの4人。その中でもペートラチャは王と2人きりで話すシーンが飛び抜けて多いです。彼は王にものすごーくハッキリ意見を言うんですね。もちろん一方は国王で一方は官僚ですからはっきりした上下関係がありますが、それでもペートラチャは非常にまっすぐ王に思いを述べますし、王も耳を傾けるわけです。緊迫感に満ちた2人のやりとりは、国がその後どう動いていくかについての肝になっています。(2人のやりとりのシーンで、ナライ王はペートラチャのことを「トンカム」と呼びますね。これは彼の幼い頃からの呼び名で、2人が幼馴染であることを示しています。)

また、コンスタンティン・フォールコンも王に直接話に行くシーンが多く、ペートラチャとよく鉢合わせします。つまりフォールコンとナライ王の親密さについて一番よく知っているのがペートラチャであり、そのため誰よりも不信感を持ち、危機感を募らせて行ったのかもしれません。

最終回で説明されているかもしれませんが、ペートラチャはナライ王の次にアユタヤ王朝の王(28代目)になります。彼が王となったのち、バンコクに集められた数百のフランス兵たちはタイから撤退し、商人のみが滞在を許されたそうです。ペートラチャ王の治世ではナライ王とは真逆の「鎖国」へ向かって進んでいくことになります。(なのでナライ王とペートラチャの会話=2人の王の会話=国の流れ、となるわけです。)

ちなみにフランス兵の撤退についてはペートラチャ王による排斥というよりは、新王が即位したことでフランス側から撤退の要望が起こったということのようです。詳細が書かれた論文を見つけたのでまたこのブログで紹介しますね。

 

演じるのはサルット・ウィチトラーノン Sarut Vichitrananda(愛称ビッグ)。実はSoul After Sixというバンドのベーシスト。音楽活動の傍ら、俳優としてドラマや映画に出演するようになり、俳優としても人気に。ペートラチャを演じた際に、「普段の彼と雰囲気が違う!」と話題になったようなのですが、確かにインスタを見てみても、お肌ツヤツヤの若いオニイサン(バイク好き)という感じで、あのペートラチャのイカつい面影が無い…。まあ私はペートラチャ大好きなので、口ひげはやしてお団子ウィッグを被っておくれよ!って思っちゃいますけどね!

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ソラサック伯爵(ドゥーア)

ペートラチャの息子。武術の達人で、ムエタイの基本となる技を体系化し後世に残した人物です。ドラマではいつも眉間にシワを寄せ、静かに官僚たちのやり取りに耳を傾けていますが、最後に辛辣な言葉を放ってその場を去る…という(だいたいこのパターン)影のあるキャラクターです。

第12話ではっきりセリフとして語られますが、実は、ペートラチャとソラサックは養父・養子の間柄であり、ソラサックはナライ王の実子(隠し子)なんですね。ナライ王がチェンマイ(当時は別々の国だった)へ戦争を仕掛けた時、王はチェンマイ王室の王女、クサワディー王女を気に入り、アユタヤへ連れて帰りました。当時チェンマイは低く見られていたので、王はクサワディー王女を側室として扱うことはせず、ペートラチャに譲るという形で面倒を見させました。王女はペートラチャの妻となりますが、そのころにはお腹にナライ王の子を宿していたという訳です。その子が王の子であることは公然の秘密とされ、ペートラチャの息子として育てられたのです。

いつも眉間にシワを寄せ黙っている、周りと歓談することもなく1人先に去る、彼が背負っているあの影はその生い立ちから来るものだったのでしょうか。王から寵愛を受け異例の昇進を遂げるフォールコンへの強い憎しみは、あるいは自分が受けたかもしれない実父からの愛をそこに見ていたのかもしれません。

一方で、自分を育ててくれた養父ペートラチャへの敬愛と忠誠心は厚く、ペートラチャの片腕として忠実に行動します。

ナライ王亡き後、まず王の実子であったソラサックに次期王の白羽の矢が立ちましたが、彼が断ったという経緯がありました。(ナライ王の実弟、ノイ王子とアパイヤト王子はソラサックによって処刑されたそうです)そしてペートラチャが28代王となり、ソラサックは父ペートラチャの後を継ぐ形で29代目の王となったのです。「後を継ぐ形で」と言っても、すんなり事が運んだわけではなく、彼の父が次の王に指名したのは彼ではなく、なんとペートラチャ王の実子だったとのこと…。こ、これは、ちょっと辛すぎませんか。

ソラサックが王座についた時、その名は「スリイェーンタラーティボディ王(サンペット8世)」またの名を「プラチャオ・スア」と呼ばれました。「プラチャオ・スア」とは日本語で「虎の王」という意味です。王となった彼は残忍な行為を繰り返し、非常に恐れられたのでした。(多くの逸話が残っているようなので、ご興味のある方は調べてみてください。読むだけでギャーとなるような話が色々出てきますよ…)

ソラサック伯爵の人生を追ううちにすっかり心が重く暗くなってしまいましたが、最後にちょっとほっこりできるような話題をひとつ。彼が体系立てたムエタイの基本「メーマイ・ムアイタイ」は現在でもムエタイの基本とされており、タイの「ムエタイの日」である2月6日は彼が王位に就いた日であるとのことです。ちょっと心軽くなりました?私はなってません!笑

 

演じるのはジラユ・タントラクーン Jirayu Tantrakul(愛称ゴット)。3chのリアリティ・オーディション番組「ザ・アイドルプロジェクト」第1回グランプリを受賞し、3ch専属俳優として活動を開始します。(タイの俳優さんは基本テレビ局に所属しています)『運命のふたり』放送時は3ch所属の俳優でしたが、2020年を境にフリーランスになりました。インスタグラムでは、ソラサック伯爵役では見せなかった笑顔が見られるだけでなく、彼の絵画やアニメーションなどのアート作品(多才!)、読んでいる本や付けているノートが紹介されています。ぜひぜひ覗いてみられることをオススメします!

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マリー・ギマルド(後のターオ・トーンキープマー)

コンスタンティン・フォールコンの妻。母がポルトガル人と日本人のハーフという日本にルーツを持つ人物です。祖父はキリシタン大名の末裔だと言われています。(第8話では日本で初めて洗礼を受けた王子だというセリフがありました)

ココナッツとヤシ糖、米粉が主な材料であったタイ菓子の世界に、卵、牛乳、小麦粉など西洋の素材を取り入れました。今定番のタイ伝統菓子の中には彼女がもたらしたとされるものがいくつもあります。夫の死後は、アユタヤ政府で菓子部(そんな部門があるんですね!)の長として活躍しました。

ドラマでは、デートへの密かな思いを胸に、強引に結婚を迫るフォールコンを受け入れることにします。マリーの本心を知っていたフォールコンはデートへの嫉妬を拭いきれないまま結婚生活を過ごすことに…。ドラマの中で「結婚」と「愛」について一番鮮やかに描かれているのはこのマリーとフォールコンのペアなのかもしれません。二人が最後に対面するシーン(最終回)は圧巻の名場面です。

また、マリーとカラケーは無二の友情を結び、長くお互いを支え合います。マリーが屋敷で耳にした国にとって重要な話がカラケーに伝えられることでドラマはクライマックスへと向かっていきます。ドラマの「恋愛」部分と「歴史」部分の橋渡しをする重要なキャラクター。

 

演じるのはスシラー・ネンナー Susira Naenna(愛称スージー)。13歳でモデルとしてデビューし、後に女優としても大人気になります。現在もモデルとしても活躍中。インスタグラムで彼女のグラビアをぜひ見て欲しい。美しすぎて私は鼻血が出ました。つーか、アカウント名が「sushiroo」なんですけど、「スシロー」…?

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チーパカオ師

時の高級官僚たちが師と仰いでいた「チーパカオ師」。ドラマでは寺院に結界を張り、魔術や武術の道場を開いています。カラケーの中にケスランが居ることをすぐに見抜き、身を護るための呪文(透明人間になれる!)を彼女に授けます。

とまあ、ファンタジー世界の住人感100%のキャラクターなのですが、実は歴史上でも実在したと見なされています。コーサーティボディ卿(コーサーパン)が率いたフランス使節団のメンバーであり、その不思議な力で船が渦潮に巻き込まれるのを救ったという書き残しがあります。また、バンコク・ノーイ地区にある「シースダーラーム寺院」は通称「チーパカオ寺院」と呼ばれ、師の行方が分からなくなった後、弟子たちが師のために建てた寺だと言われています。この寺にドラマのチーパカオ師をモデルにした像ができたそうなので機会があれば行ってみてください!

実は「チーパカオ」とは個人名ではなく、「白衣の出家者」という意味の言葉です。「出家者」とはいえど「僧侶」ではなく、“呪術を使う世捨て人”という意味では「仙人」に近いかもしれません。第7話で、呼び名を尋ねたカラケーに「チーパカオ師と呼んでくれればいい」と答えますが、つまりこれは「仙人さまと呼んでくれればいい。」というようなニュアンスです。

初対面でカラケーの中に未来人であるケスランが居ることを見抜き、身を護る呪文を彼女に授けますが、これがドラマのクライマックスで非常に重要なキーとなります。またフランス渡航時には「初めての女性の弟子」として自分の留守をカラケーに託します。それまでは「なぜか予言じみたことを口にする女」だと訝しがられていたカラケーが、高官たちから信用されるようになっていきます。

 

演じるのはワッチャラチャイ・スントンシリ Watcharachai Soonthornshiri(愛称クルーエン=エン先生)。現役スタントマンであり、乗馬の先生でもあります。数々の歴史映画で俳優に乗馬のテクニックを指導しているのがこのエン先生。古代の武器を使ったアクション指導もしています。2010年より俳優活動を始め、チーパカオ師を演じて一気にお茶の間の人気者になったのだとか。インスタグラムでは映画撮影の裏側が覗けるほか、ドラマのイメージと違って意外とお茶目なおじさまであるクルーエンが見られます!

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登場人物紹介:がっつりバージョン【後編】に続きます。

残すところあと一人なのですが、このお方が結構長くなってしまったのです。

最終回だけに登場した謎の人物「シープラート」、よろしければお読みくださいませ!

 

【前編】【ネタバレあり】歴史ドラマ?『運命のふたり』人物紹介:がっつりバージョン

第8話を境に歴史ドラマとしての色が濃くなっていく『運命のふたり』。ここから第15話(最終回)前半まではガッツリ12時間ほど大河ドラマが繰り広げられ、最後の1時間でやっと「あそうそう、これ当初ラブコメだったわ」と思わされるジェットコースターぶりです。

わたくし個人について言うと、タイムスリップものの恋愛コメディにハマっていたはずが、あれ?大河ドラマ化してからの方が面白くない?とさらに深みへ引き込まれてしまったのでした。

歴史ドラマ部分では、名前や血縁関係、力関係など個人的に分かりにくい点もあったので、当時の官位システム等について触れた後「がっつり版」の登場人物紹介をしていきます!

今回は5人紹介します。下の相関図(この記事用にカスタマイズ済み!)と見比べつつ読んでいただければ分かりやすいかもしれません。

今後【中編】【後編】と続きますので、よろしければまたお読みください。

(※20121015日現在、Netflixでの配信が終了したのでもうネタバレでいいや、と思っているのですが、いつ何時、どの媒体でまた配信されるか分からない…というわけで、ネタバレを避けたい方はスルーしてください)

 

f:id:pachiko_shikako:20211025011909p:plain

登場人物名についての予備知識

アユタヤ時代の官位制度「バンダーサック」

バンダーサックとはアユタヤ時代のタイの官位制度です。Wikipediaによると、高い位から順に、

ソムデットチャオプラヤーチャオプラヤー、プラヤー、プラ、ルワン、クン、ムーン、パン、タナーイ

と呼ばれたということですが、『運命のふたり』ではオークヤー、オークプラ、オークルワン、など少し違った名称が使われています。これは上記のwikiのバンダーサックの官位より古い名称とのこと。

日本語字幕では爵位の名称に置き換えて訳されています。ヨーロッパの爵位は領地に属するもの、日本の爵位は家柄に属するものですが、タイの「バンダーサック」は政治的地位です。(政治的地位自体が血筋によって決まる部分も大きいようなので「家柄による」と言えなくもないですが…)

階級が上がるごとに名前も変わる!

この時代は、階級が上がるごとに新しい名前も賜ることになっていました。つまり、官位とともに本名自体まるっと変わってしまうシステムだったということ。作中でも、時を追うごとに名前が変わっていきます。それに加えてタイには「近しい間柄は決まった愛称で呼び合う」という習慣もあるので、これが結構ややこしい。ロシア演劇の登場人物くらいややこしいです。例えばデートは第1話では「ムーン・スントンテーワー」という名前で、公式の場や仕事仲間からはそのように呼ばれていました。6話で昇進し、「クン・シーウィサーンワーチャー」になります。ムーン(男爵)からクン(子爵)へ、そしてその後に付いている個人名も変わっているのです。

また個人名についてですが、例えばデートの父親の「ホーラーティボディ」という名前。タイ語で占星学のことをホーラサートと言います。「ティボディ」は機関の長という意味を持っており、本名自体が「占星学の長」という意味になります。

財務大臣だったコーサーティボディ(レク)が亡くなった後、弟のパンが財務大臣を引き継ぐことになったとき、「コーサーティボディ」と言う名前も引き継ぎます。「コーサ」はパーリ語で貯蔵庫、お金を保管する場所と言う意味を持つそうです。

つまり、階級が上がるときに王から賜る名前は「階級+職務内容」的なものだったということです。

ではいよいよ、「ナライ王」時代の主要登場人物【前編】です!

ナライ王

1656年から1688年までのアユタヤを治めた、アユタヤ王朝27代目の王。「ナライ」というのは「ヴィシュヌ神の権化」のこと。当時は王にヒンドゥーの神々の名前を付けることが多かったそうです。

ナライ王は文学や芸術を愛し、アユタヤ文学史の黄金時代を築いたといわれます。ヨーロッパ諸国にも大きく門戸を開き、アユタヤを国際都市として発展させました。能力さえあれば外国人であっても官僚として登用するという王の方針は、一方で国内の官僚たちから反発を招くようになります。

当時、「国王は仏教の保護者である」という思想が強くありました。ナライ王ももちろん敬虔な仏教徒でしたが、今で言う「信教の自由」の精神も持ち合わせていました。キリスト教への改宗を迫るフランスに大らかに対応する王を見て、官僚たちは不安を募らせていきます。

ドラマでは、全ての頂点に立つ王であると同時に、共に育った仲間を愛する人間らしい部分がクローズアップされています。「好奇心が旺盛で人を信じやすい」という性格が弱点となって衰退していく姿が描かれる訳ですが、この好奇心旺盛な姿がなんとも愛らしい。(王様に対して失礼でしょうか…)特に、フランス帰りの官僚たちから旅の報告を受けるシーンはとても印象的でした。見たこともない街の様子、タイには無い技術、雪が降った日の方が寒くない、そんな話に驚きながらもキラキラ目を輝かせます。

 

演じるのはプラーパドン・スワンバーン Praptpadol Suwanbang(愛称プラープ)。視聴者を魅了する素晴らしい演技であったこと以外には一つしか言うことはありません。イケオジすぎるイケオジです。インスタでは日常のちょっとカワイイお姿が、フェイスブックでは「イケオジ・オブ・イケオジ」っぷりが見られます。できれば両方見て欲しい。なぜなら彼はイケオジ・オブ・イケオジだから。(しつこい)

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コンスタンティン・フォールコン(後のチャオプラヤー・ウィチャーイェン)

前回の「ざっくりバージョン」の人物紹介では後半に紹介したコンスタンティン・フォールコン。実はナライ王の次に紹介するべき重要人物です。なぜなら彼は、このドラマにおける「ラオウ」だから。

フォールコンは、ナライ王の治世で政府最高顧問にまで上り詰めたギリシャ人です。イタリア人の父とギリシャ人の母の間に生まれ、16歳で東インド会社へ就職。25歳で商人の見習いとして渡タイし、当時の財務大臣であったコーサーティボディ(コーサーレク)に才能を見込まれ、彼に直接仕えることに。

商人としてさまざまな国を見、経験を積んできたフォールコンは知識も豊富で商才にも恵まれていました。好奇心旺盛なナライ王の様々な問いに応え要望を叶えるうちに、今度は王に直接使えるようになります。しかし王の独断で異例の昇進を遂げたことで、タイ人官僚たちから強い反発を受けることに…。

ドラマでは、フォールコン→カムヘン(リットカムヘン)→ウィチャーイェンと名前が頻繁に変わっていきます。昇進が早かったってことですね。貪欲に上り詰めようとしたことで自ら身を滅ぼしていく姿が細やかに描かれます。

また、たった一人愛した女性、マリーの愛を求め続け、それを手にすることができなかった悲しい男でもあります。この部分の描かれ方が素晴らしかったですね。才があり、力があり、恩師を欺いてまで上り詰めても、たった一人の心が手に入らない。ね?これってもうラオウじゃないですか。

 

演じるのはルイス・スコットLouis Scott(愛称ルイ)。90年代に歌手として活躍の後、現在は数々のドラマで活躍するケニア出身の俳優です。プライベートでは、2020年に結婚。お相手はなんと、カラケーの侍女ヤームを演じたラミダ・プラパートノーボンRamida Preapatnobon(愛称ヌン)。インスタグラムでは彼女とのラブラブ生活を垣間見ることができます。

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オークヤー・コーサーティボディ(通称コーサーレク)

時の財務大臣。商人の見習いだったフォールコンの才能をいち早く見抜き、政界へ引き上げます。ナライ王の乳母を実母に持ち、幼い頃からナライ王と共に育ったため、王から絶大な信頼を受けています。汚職の疑いで非業の死を遂げますが、歴史上言い伝えられている話とドラマのエピソードに少しズレがあり(諸説あるのでしょう)、この点もドラマをより興味深いものにしています。「何故この人が処刑されなければならなかったのか」は第3話から第9話まで、時間をかけて描かれる大きなテーマの一つです。

ドラマ内では、高官たちがフォールコンに不信感を募らせる中、王が彼を寵愛し、重用する理由を誰よりも理解していました。またフォールコンによる陰謀が確信に変わった時も、自分が目をかけた相手を決して責めずに説得を試みます。そんな彼がまさに「足元をすくわれる」形で亡くなってしまう訳ですね。歴史の波は非情です。

死後、実の弟が「コーサーティボディ」の名を賜ることになったため、歴史を語る上では「コーサーレク」の名で呼ばれることが多いとのこと。(弟は「コーサーパン」)ドラマ内では「レク様」「パン様」と呼び分けられます。

 

演じるのはスラサック・チャイアットSurasak Chaiyaat(愛称ヌー)。柔らかい雰囲気をまとったいぶし銀。ぱちこ的「理想の上司ランキング」ダントツ1位です。数々のドラマに出演していますが、「ヒロインの父親役」を演じることが多いそう。わ、分かる…!個人的には彼が執事役のサスペンスホームドラマを観てみたいんですがどうですかね?

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オークヤー・コーサーティボディ(通称コーサーパン)

時の外務大臣。コーサーレクの実弟。ナライ王からの信頼に厚く、語学も堪能で、ルイ14世へ向けた使節団を率いました。その聡明さと人柄でフランスやドイツの文献にも名を残しており、当時ヨーロッパ諸国から対等に見られていなかったタイの力を認めさせた人物だとも言われています。

コーサーパンも非業の最期を遂げますが、それはこのドラマよりもっと後のこと。(『運命のふたり2』で描かれたりしないかなーとも思いましたが、ちょっと時期が被ってなさそうな気配。)

ドラマ内では大きなエピソードの中心にはなりませんが、要所要所で最後に判断を任され、この方の回答待ちでみんなが動き出す「縁の下の力持ち」、「真のリーダー」的なポジションです。いつもどっしり構え、冷静に状況を観察する姿が描かれます。(ちなみに日本語版ウィキペディアには「ペートラーチャー王の息子」と書かれていますが、これは99%間違いでしょう。)また、タイの現王朝、ラタナコーシン朝チャクリー朝)の1代目の王の祖先にあたると言われています。

 

演じるのはチャートチャイ・ガムサンChartchai Ngamsan(愛称ゲン)。ちょっとホントにこの方のインスタを見て欲しいのですが、すんごい肉体派です。ドラマ内では王様に謁見するときはみんな上半身裸になるのですが、特に気づかなかったんですよね。なぜだ。びっくりのゴリマッチョ・イケオジですよ。だがしかし言われてみればシルクの伝統衣装を着ていてもがっちりとガタイ良い感じはあったかも…。パン様の静かで優しい雰囲気にやられて気づきませんでしたわ。

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オークヤー・ホーラーティボディ

ナライ王の教師であり、詩人、占星術師。いくつもの未来の出来事を言い当て、国の重要な決定はホーラーティボディの算出した吉日を元に行われました。また、タイで初めて作られた教科書、「ジンダマニー教本」(第4話に登場)を書いた人物でもあります。

ドラマではその慧眼でいち早くカラケーの変化に気づき、常にカラケーの味方であり続けます。第1話では、呪いから復活したかに見えたカラケー(中身がケスランに入れ替わったばかり)がおかしな言動を繰り返すことにみんなが騒然とする中、ホラ様だけがニコニコと微笑んでいます。一視聴者としては「え、おじさま一人笑ってない?」と不思議な気がしたものですが、なーんだ、最初っから分かってたというわけですか!

どんな不穏なシーンであってもホラ様の登場によって登場人物のみならず視聴者までがホッとするような存在感。デートとその兄シープラートの父。

 

演じるのはニルット・シリジャンヤー Nirut Sirijanya(愛称アーニン)。白髪に青い目(お母様がフランスとタイのハーフで、母親ゆずりの目だとのこと)の、「上品の権化」のような紳士です。2021年現在74歳。ドラマ撮影時は71歳でした。タイ俳優界の大御所ですね。健康の秘訣は25年続けている一日一食生活。肉も10年間食べていないとの事。日本の映画だと、小栗旬さん主演の『ルパン三世』にめちゃめちゃ出てます。悪の親玉役です。インスタアカウントが無いようなので、『ルパン三世』の予告編を貼っておきますね。これを見て「ホラ様!」と叫んでください。

 

youtu.be

https://youtu.be/EPz64LdFr8U

 

登場人物紹介:がっつりバージョン【中編】に続きます。

 

 

歴史ドラマとしての『運命のふたり』登場人物紹介:ざっくりバージョン

こんにちは。

またまた登場人物紹介ですが、今回は「歴史ドラマ」としてのストーリーを追う形で”ざっくり”ご紹介していきたいと思います。

この時代の官僚は位が上がるごとに名前自体が変わっていくので、観ている側は誰のことか分からないということが起こり得ますが、この記事ではドラマ内でよく呼ばれる名前を採用しました。

下の相関図と見比べながら読むと分かりやすいかもしれません。

 

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1【ナライ王】

1656年から1688年までのアユタヤを治めた、アユタヤ王朝27代目の王。文学や芸術を愛し、アユタヤ文学史の黄金時代を築いたといわれます。好奇心旺盛で、ヨーロッパ諸国にも門戸を開いて積極的に外国文化を取り入れようとしました。

 

2【コーサーレク(レク様)】

時の財務大臣。有能な軍師でもあり、ビルマ戦では総司令官を務めました。ナライ王の乳母を実母に持ち、幼い頃から共に育ったため、王から絶大な信頼を受けています。ギリシャの商人コンスタンティン・フォールコンの能力をいち早く見抜き、政界へと引き揚げました。コーサーパンの兄で、チャンワの父。

 

3【コーサーパン(パン様)】

時の外務大臣で、コーサーレクの弟。(つまり彼もナライ王と乳兄弟です。)温厚かつ冷静な人格者で、その人柄を讃える文書がヨーロッパにも残っているそうです。フランス、ルイ14世への使節団を率いました。ドラマ内ではカラケーの父と遠い親戚にあたるという設定です。

 

4【ホーラーティボディ(ホラ様)】

ナライ王の教師であり、詩人、占星術師。数々の未来を言い当て、国の重要な決定はホーラーティボディ公の算出した吉日に行われました。タイで初めて作られた教科書「ジンダマニー教本」の著者としても知られています。デートの父で、カラケーの良き理解者。

 

5【ペートラチャ】

王室戦象軍の責任者。(当時は象が重要な戦力だったのですね。)彼の母もナライ王の乳母であり、幼い頃から一緒に育ってきました。外国人を重用する王の方針にはっきりと不快感を示し、王に対等に忠告できる数少ない人間。ドゥーアの父。

 

6【ドゥーア(ソラサック伯爵)】

ペートラチャの息子。デートやルアンと同様、若き官僚ですが、この二人とは違い、常に独特の影を背負っています。最初の登場から、出てくるたびに妙に気になる存在なのですが(私だけじゃないはず)、終盤まで彼について詳しい描写はされません。とはいえ歴史上かなり有名な人物なので、タイの人たちはすんなり観られたのかもしれません。ドラマを観て気になった方もいると思うのですが、第9話で彼が突然ムエタイの技を次々と繰り出すシーンが出てくるんですね。あれは、「メーマイ・ムアイタイ」と呼ばれるムエタイの基本となる技で、その基本の技を確立し、まとめたのがソラサック伯爵(ドゥーア)だということです。ドゥーアなんだからそりゃムエタイのシーン作らなきゃという感じでしょうか?日本人にとってはちょっとびっくり唐突なシーンでしたけれど。はい。個人的にソラサック伯爵が好きすぎて長めになってしまいました。

 

7【コンスタンティン・フォールコン(チャオプラヤー・ウィチャーイェン)】

ナライ王の治世で政府最高顧問にまで上り詰めたギリシャ人。元々は商人でしたが、深い知識と広い経験を武器に、異国の地タイでどんどんのし上がっていきます。市場で一目惚れしたマリーに強引に迫り、妻にします。地位も美しい妻も手に入れて順風満帆の人生のようですが、栄光の裏には黒く渦巻くものがあり…。

 

8【マリー・ギマルド】

歴史上ではフォールコンの妻として知られている女性。また西洋の菓子文化をタイに広めた第一人者としても名を残しています。現在「タイの伝統菓子」として知られているお菓子の中には、彼女がもたらしたものも多数あります。日本をルーツに持つ、商人の娘。聡明かつ芯の強い女性で、カラケーと出会ってすぐに心を通わせ合うように。デートに恋心を抱いたままフォールコンと結婚し辛い生活を送りますが、いつも自分を見失わない高潔な女性です。

 

9【チーパカオ師】

コーサーパン(パン様)の教師であり、フランスへの使節団のメンバーでもあったチーパカオ師。ドラマ内では不思議な力で結界を張ったり、カラケーの心に直接呼びかけたり、「こりゃゼッタイ架空の人物だろ」と思ったら、なんとちゃんと歴史的資料にその存在の記録があるとのこと!バンコクには師を祀ったお寺もあるそうです。カラケーという架空の存在が実際の歴史にアクセスするというストーリにおいて、どうしても発生してしまう「ひずみ」。それを埋めるための重要な役割を担うキーパーソンです。

 

10 【ピー王子】

ナライ王の養子。王から寵愛を受け、晩年病に臥せった王はいつもピー王子をそばに置いたといいます。王の後継者として有力だとみなされ、権力争いに巻き込まれていくことになる悲劇の王子。演じているのはタイの伝統的な歌唱法で歌う歌手、ゲン・タチャヤ。ピー王子がナライ王のために歌う歌声にも注目です。

 

おわりに

ザッとメインの人物を紹介しましたが、いかがでしょうか。この人物紹介がなんらかのガイドになれば嬉しいのですが。

この時代の歴史を調べていくと、ドラマのエピソードはかなり歴史に忠実に作られていることが分かってきます。一方、ケスランの大学での授業で「有力な説」と説明されたのとは違うことが実際には(ドラマの中ですが)起こったりします。それがまた絶妙なリアルさを生み出しています。

カラケーは「立場上関わらざるを得ない」というレベルを超えて積極的に歴史に絡みにいきますが、カラケーが関わろうが関わるまいが史実通りに歴史が流れていく無情さにもグッときますね。

次回は、今回紹介した人物のうち何人かについて、ネタバレ含め解説していきます。

 

【ネタバレギリギリ】Netflix配信『運命のふたり』ちょっと詳しめ人物紹介

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前回の概要でも少し紹介したのですが、今回はそこから少し掘り下げた人物紹介です。

できるだけストーリーには触れないようにしています(第1話前半あたりには触れてしまっています)が、ネタバレしているかしていないかというと、ギリギリだと思います。

まだドラマを見ていない方で「まっさらな状態で観たい!」という方はスルーしてください。

また、私個人の解釈も含みますので、「自分の解釈はそうじゃない」という場合はごめんなさい。逆に、そういう部分をコメントいただけたりしたら嬉しく思います。

 

2人で1人の主人公、ケスランとカラケー

この物語の主人公は「カラケーの体を借りたケスランの精神」である、とも言えるけれど、ストーリー上彼女はずっと「カラケー」と呼ばれるし、超絶美しいカラケーの姿を視聴者は観る訳です。この記事では、この2人が主人公だという解釈で人物紹介をしたいと思います。

この2人はただ「中の人とガワ」ではありません。ケスランは「カラケーの魂」に運命を縛られてしまった。「2人の魂がカラケーの体を共有してそれぞれの運命に抗おうとする物語」だとするのがワタシ的には正確な表現かな、と思います。

 

ケスラン

主人公のケスランは考古学者。大学時代はゼミでトップの知識を誇った才女です。でも容姿には全く自信がなく、密かに想い続けている腐れ縁の男子には憎まれ口ばかり叩いてしまいます。

アユタヤでの遺跡調査の帰り道、大事故に遭ったケスラン。あの世とこの世のはざまで出会った美女カラケーに肉体を託され、その魂はアユタヤ時代まで飛ばされてしまいます。現代世界では祖母と母との3人暮らしで、タイムスリップ後も家族を思っては涙を流す愛情深い人でもあります。

頭の回転が速く、自分の正体を探ろうとする人々を口八丁で翻弄し、様々な危機を回避していく様は痛快。

演じるのはラーニー・キャンペーン(愛称ベラ)。タイで大人気の超絶美女が演じる二重アゴお調子者キャラは、やっぱどうみても美しいのです。

カラケー

もう一人の主人公カラケーは、家族の死によりアユタヤのお屋敷へ引き取られたピサヌロークのお嬢様。とことん他人に冷たく、特に侍女には暴言、殴る蹴るを繰り返す超バイオレンス姫です。恋敵を殺そうとまでしたことで呪いをかけられ、地獄へ連れ去られるすんでのところでケスランの魂に助けを求めます。「私の体をあげるから、善い行いをしてみんなに私は悪い人間ではないと知らしめて」と。

なので、第1回目から「カラケー」と呼ばれ、「カラケー」として生きる人物の中身はケスラン。肉体を明け渡した側の、「魂としてのカラケー」の行く先もドラマの注目すべきポイントです。

演じるのはケスランと同じくラーニー・キャンペーン(愛称ベラ)。一見クールビューティーな雰囲気ですが、とっても愛らしい女優さんです。このドラマはベラの超絶美しい姿と素晴らしい演技力があってこそだと思います。感情表現が素晴らしく、観ているこちらがハッとさせられますし、カラケーと一緒に嬉しくなったり悲しくなったり、追体験できるのです。

ちなみに、カラケー役は最初、別の女優さんにオファーされたそうです。でも脚本を読んだその女優さんは「自分の実力ではカラケーを演じることはできない」とオファーを受けず、ベラが演じることになったとか。いや、私たち視聴者はラッキーでした。ベラのカラケーを観ることができたのですから。

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デート

カラケーの許嫁(いいなづけ)。時の王「ナライ王」から大きな信頼を寄せられる占星術チャオプラヤー・ホラティボディを父に持ち、自身も将来を期待される若き官僚です。冷酷で暴力的なカラケーを忌み嫌い、婚約解消を父に申し出るも承諾されません。せめてもと結婚の日を先延ばしにし続けています。

ある日を境に人が変わったように素直で明るくなったカラケーを不審に思い、疑いをもちますが、一方でそんなガラケーに惹かれていく自分に戸惑う、揺れる男デート。惹かれては揺り戻されるその振れ幅が広くて、こりゃ演じる方も大変だろうなと思います。(何様だ!すみません)

視聴者としては「なんだよお前ら!最終的にくっつくんだろ!」と言いたくもなるジリジリ加減ですが、彼のツンデレ具合を観察するのもまた楽しみの一つなのです。(特にたまに出るデレを見るのが楽しみです!)

個人的にはカラケーの輝きが強すぎて、いまいち地味な存在になってしまっている印象なのですが、それがいいんです。男性が光を受けてくれてこそ女性が輝くなんて素敵すぎます。

演じるのはタナワット・ワッタナプート(愛称ポップ)。黒目がちな瞳と柔らかい笑顔がチャーミングな大人気俳優、38歳(2021年現在)です。

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”ルアンリット”と”ルアン様”

このドラマ内で「ルアン」とされる人物は2人登場します。一人はケスランが密かに想いを寄せる考古学者仲間のルアンリット。学生時代から一緒に学んできた大切な友人でもあります。無精髭を生やし、いつも眠そう。学業では成績トップのケスランにいつも助けられてきたダラダラゆるゆる系男子。

もう一人の「ルアン」はデートの親友。デートと同じく将来有望な官僚です。父親は時の外務大臣チャオプラヤー・コーサーパン。ルイ14世時代のフランスへ使節団を率いた人物です。

  ※これ全然違いました!すみません訂正します。パン様の息子じゃないです。(2021/10/03)

現世のルアン(ルアンリット)にそっくりな見た目をしていますが、中身は全然違って強く逞しく、頼れる存在。カラケーとして生きなければならないケスランにとって、現世で好きだった男性と同じ顔で、しかも頼りがいのある「ルアン様」は心の拠り所となりますが、ここに何かカギがありそうで…。

演じるのはパラマ・イムアノータイ(愛称パンジャン)。なんとこの方、このドラマの監督さんでもあるのです。すごくないですか?これだけ出演シーンの多い役をやる監督さんってあんまり見たことない気がするんですけど。(話がずれますが、ハリウッドだと監督兼主演とかありますけど、あれってどうやってるのか全く想像つきませんね。可能なの?すごすぎる。)

でも、監督がこのポジションに入って演じることで生まれる世界観の厚みみたいなものってあるのかもしれません。ああもう激推し。パンジャン様、ルアン様。

パンジャン氏はアイドルグループの一員として活躍したのち、俳優として、監督として活動の幅を広げてきた才能溢れる方。哀愁を帯びた切長の目と、鍛え上げられた肉体に世の女子どもはメロメロです。

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チャンワ

この物語は、カラケーがチャンワを殺そうとするシーンから始まります。そう、カラケーが殺したいほど憎んでいたのがチャンワ。

チャンワとデートは密かに想い合っており、冷え切った心の奥でデートへの想いを育んでいたガラケーにとって邪魔でしかなかった訳ですね。

ナライ王政の偉大な軍師コーサーレックの娘で、超の付く、本物のお嬢様です。その生まれゆえ、女ながらに高い教育を受けて育ちましたが、驕ることなくいつも静かに微笑んでいます。教養の高さと当時の女性の地位との差によって悩み苦しむこともあったはず。(推測。)

ストーリーを追うごとに彼女の悲しい心の内も明らかになっていきます。サイドストーリーとして注目すべき人物です。

演じるのはカンナラン・ウォンカジョンクライ(愛称プラーン)。インスタや他のドラマなどを見てみると、実はかなりゴージャス系美女ですね。ビシバシに濃く長いまつ毛と憂いある瞳、口角がキュッと上がったアヒル口が素敵。他のドラマではヒロインをバンバンつとめる大人気女優さんです。

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おわりに

ここまでで6人の人物を紹介した訳ですが、演じる役者さんは4人です。タイムスリップものあるあるですね。現代とアユタヤ時代でのキャラの演じ分けも楽しめます。個人的には2人のルアン(ルアンリットとルアン様)の落差がグッときます。

この6人は、「恋愛ドラマ」部分の主要人物です。

次回は「歴史大河ドラマ」部分の人物紹介です。こちらはドラマを見進める際に混乱しがちなので、ドラマを観る前に確認するのもおすすめです。